猫の食事の専門獣医師Dr. Piersonインタビュー Vol.6

最近の猫がなりやすい病気と食事との関係

「うちの猫はドライフードでも元気だから大丈夫!」

飼い主さんからよく聞く話です。でも、ちょっと考えてください。

どんな動物でも、病気の症状が出るまでは元気です。当たり前のことのようですが、よく考えないと手遅れになるのです。

  • 猫の糖尿病の投稿サイトを見ると、飼い主がその兆候に気づくまでは、みんな「元気だった」と言っています。
  • 尿道閉塞の猫はみんな「元気だった」のです。おしっこをするのが痛くなるまでは。あるいは、膀胱が破裂して死んでしまうまでは。救急車で搬送され、カテーテル治療を受ける前は。
  • 膀胱炎の猫も「元気でした」。痛みに耐えられなくなり、血尿が出て、トイレを使わずにあちこちで排泄してしまうようになるまでは。
  • 猫に不適切な食事やアレルギーになりやすい原料を食べて、食物不耐症/炎症性腸疾患、ぜんそくの症状などが出るまでは、「元気でした」。
  • 腎臓や膀胱の石が大きくなって、病気の症状が出るまでは「元気でした」。
  • ガンになった猫は、腫瘍が大きくなり病気に気づくまでは「元気でした」。

つまり、病気はすべて、私たちが気づくまでに長い時間をかけて「成長している」ということです。ですから、「うちの猫はドライフードでも元気だから大丈夫!」という考えは、「予防栄養食」を信じる私には、NOと言わざるを得ません。

私が言いたくないのは、飼い主さんが病気の猫を連れて来た時に、「あ~あ、病気になっちゃったね。猫に適した食事(低炭水化物の缶フードか、バランスのとれた手作り食)を最初から与えていたら、こんなことにならなかったのに。」ということです。

この「予防栄養食」という考えに乗るためには、以下の事実を理解しておかなければなりません。

十分な水分量で健康を維持

尿道は十分な量の水分が流れていれば、健康に維持できます。痛くて、命にかかわる、治療費も高い泌尿器系の障害は、猫(特にオス猫)にドライフードを与えた結果、よくあることです。前にも話しましたが、この状態だった私の猫オピーをご覧ください。

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この病気は深刻で緊急を要する問題ですが、缶フードを食べている猫には、めったにない病気です。オス猫でもメス猫でも、水分が十分な缶フードを食べている猫なら、ひどい痛みの膀胱炎になる可能性も低いです。

猫は喉が渇かない!?

猫は生得的に喉の渇きの欲求が低い動物のため、食事から一緒に水分を摂取する必要があります。猫が本能的に獲ってくる獲物は70~75%が水分ですが、ドライフードの水分は5~10%しかありません。また、飼い主の期待とは裏腹に、猫はこの水分不足を自ら補うことをしません。いくつかの調査結果によると、缶フードを食べている猫は、ドライフードを食べている猫と比べて、水入れに入れた水分を含めて、トータルで2倍の水分を摂取できていることが分かっています。

炭水化物が糖尿病予備群の原因に?

炭水化物が原因で、血糖/インシュリンのバランスを壊し、糖尿病予備軍になる猫がいます。ドライフードだけでなく、缶フードでも中には炭水化物を多く使用している製品があります。注意してほしいのは、「グレインフリー(穀物不使用)」は必ずしも「低炭水化物」とは限らないということです。

猫は真正肉食動物です。つまり、猫は肉由来のタンパク質を摂取する必要があります。

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歯の健康に効果があるのは

勘違いしている人が多いのですが、「ドライフードが歯の健康に効果があるというのは間違いです」これには何の科学的根拠もありません。猫はドライフードを飲み込むことが多いですが、噛んだとしても、すぐに砕けて粉々になり、歯の研磨効果などはありません。

この点は缶フードも同じで、歯磨き効果はありません。日々、歯ブラシで磨いてやることがベストです。あるいは、生肉を与えて噛むようにすると効果が期待できます。

猫の飼い主はよく、缶フードは高過ぎると言いますが、私から言わせれば「いまお金を払うのか、あとで払うのか」です。ドライフードで病気になってかかる費用を考えてください。多くの人は、病院で治療費を払ってから気づくのですが。。。

【結論】適した食事をしていたら防げる病気にかかる前に、「予防栄養食」についてよく考えましょう。